WINE BAR MAGARRI店主のミズコウです。
今日ご紹介するのは、ワイン界のスーパースター「パスカル・マーティ氏」の作品です。
彼のワイナリーであるヴィニャ・マーティの畑から見えるアンデスの山肌には、夕日を受けると真っ赤に浮かび上がる巨大な心臓の形をしたシルエットが見えます。
これは「Corazon del Indio(コラソン・デル・インディオ)」インディオの心臓と呼ばれています。
…遥か昔からこの地で暮らす人々に伝わる、ある愛の物語があります。
昔、美しいインカ帝国の姫と、勇敢な戦士が、末永く人生を共にする約束を交わしました。
しかし、愛とは時に甘さより苦みをもたらすもの、その結末は悲劇を迎えたのでした。
戦士は、不慮の死を遂げた姫の後に殉じ、姫の墓の隣で息を引き取りました。
大地の女神パチャ・ママは、この悲しい結末に心を痛め、戦士を埋葬しました。
すると、その墓が盛り上がり、まるで人が仰向けに寝たような形を描く大きな山脈、アンデス山脈になりました。
ちょうどその心臓の部分に当たるのが、コラソン・デル・インディオです。
アンデスの山にはこの戦士の心が宿り、その地で暮らすインカの人々を守っていると信じられていました。
この美しい愛の物語に登場するアンデス山脈によって守られていたものの中には、フィロキセラ禍によってフランスでほとんど途絶えてしまった自根のブドウがありました。
自根ブドウが残る高樹齢の畑と、ハンドメイドにこだわるフランスの伝統的なワイン製法が再会し、生み出された作品が、このマリポーザ・アレグレです。
「Mariposa Alegre(マリポーザ・アレグレ)」は陽気に飛び回る蝶のこと。
蝶は、南アメリカで愛と幸福のシンボルとされており、その二組の羽が、二つの愛を結びつけると言われています。
マリポーザ・アレグレと名付けたワインで表現したいものは、フランスの伝統的な技とテロワールの力、そして、甘く時に苦い、複雑な妙味を感じさせる愛の力です。
伝統的な手作業のおかげで、オートメーションでは得られない、複雑さや凝縮味を表現し、チリの大地で生まれ、フランスの技術の粋を注ぎ込んだワインに仕上げました。
五大シャトー「シャトー・ムートン」カリフォルニアの「オーパス・ワン(テクニカルディレクターとして)」の後に、チリを代表するプレミアムワインの「アルマヴィーヴァ」を手掛けた時、彼はチリの類まれなテロワールを知りました。
しかし、現状の大規模生産では、そのポテンシャルを引き出すだけのワイン造りが出来ない事にも気づいていました。
彼の胸の内には、自身のワイナリーを造りたいという思いが芽生えたのもこの頃です。
2003年、アルマヴィーヴァでの自身の役割を果たした、との思いから、彼は自身のワイナリー設立に向け、動き始めます。
コンサルタントとして世界中を回りつつ、ワイナリー設立準備を進めました。
「あのムートン、オーパス・ワン(テクニカルディレクターとして)、アルマヴィーヴァを手掛けたパスカル・マーティ氏が新ブランドを立ち上げる」
噂を耳にし、ワイン業界内外で彼の夢に共感した人が続出しました。
例えば「ロード・オブ・ザ・リング」で有名な映画会社ニューライン・シネマ(現ワーナーグループ)のマイケル・リン氏や、元バロン・フィリップ・ロッチルド社の社長で、現在アメリカで輸入会社を経営するオリヴィエ・ルブレ氏もバックアップを申し出ました。
多くの人々の夢も乗せて、2008年、満を持してマーティ氏自らのワイナリー「ディオニソス・ワインズ」を設立。
2013年、ヴィニャ・マーティと自身の名を冠したワイナリーへと変更、生涯をかけたプロジェクトとしての意気込みを表現するに至ります。
ヴィニャ・マーティのワインは、栽培から醸造まで一貫してパスカル・マーティ氏が直接手掛けています。
全てのワインに、彼の経験と技術、そして深い愛情が注がれています。
今まで世界に名を馳せたプレミアムワインばかり手掛けてきたマーティ氏は、今、上質なデイリーワインを造ることにも等しく面白さを見出しているのです。
世界最高峰を造りだした醸造家が、新たな視点で造るワイン、それがヴィニャ・マーティの提案するワインです。
そのラインナップは幅広く、カサ・デル・セロ・レゼルヴァ(当店のハウスワイン580円に採用しています)ラヴ、イライア、ピルカ、コラソン・デル・インディオ、カラク、セール、クロ・デ・ファと現在8シリーズのワインを造っています。
その中の中間ラインで、お得感溢れる価格設定のワインが「Mariposa Alegre(マリポーザ・アレグレ)」です。
当店でストックしているのは赤白で4種類
カベルネ・ソーヴィニョンの赤
コルチャグア・ヴァレー Colchagua Valley
マイポ・ヴァレーの南に位置する産地 Rapel Valley(ラペル・ヴァレー)にある、 二つのサブゾーンの一つが、このコルチャグア・ヴァレーです。
隣接するカチャポアル・ヴァレーに比べて海風の影響を強く受けるため、より昼夜の寒暖差が大きい地域です。砂質、礫質、粘土の痩せた土壌の特徴を生かし、高い品質のカベルネ・ソーヴィニョンを生み出すことで有名です。
手摘み収穫した果実をさらに選果し、ステンレスタンクで醸造。
伝統的な醸し~発酵のプロセスは24~26度の温度帯で進行します。その後8か月間フレンチオーク樽で熟成。(新樽は使用しません)
香り:カベルネ種の特徴、カシス、熟した赤スグリ、ブラックベリー、プルーンの果実味、清涼感のあるミント、メンソールのブーケといった果実からくる香りと、フレンチオーク樽からくるバニラ、クローヴ(スパイス)、シガーボックスの香りが調和します。
味わい:フルボディで滑らかなタンニン。瑞々しくジューシーな果実味、ドライフルーツを思わせる凝縮味、スパイスのニュアンスといったカベルネ・ソーヴィニョンの特徴的な要素が表現され、長い余韻が楽しめます。数年熟成させることで、さらに味わいに深みがもたらされるでしょう。
カルメネールの赤
カチャポアル・ヴァレー Cachapoal Valley
マイポ・ヴァレーの南に位置する産地 Rapel Valley(ラペル・ヴァレー)にある、二つのサブゾーンの一つが、このカチャポアル・ヴァレーです。
ラペル・ヴァレーの北側を占めるエリアで、温暖な気候と、黒っぽい粘土質土壌の影響を受け、特に高品質なカルメネールを生み出すことで知られているエリアです。
手摘み収穫した果実をさらに選果し、ステンレスタンクで醸造。伝統的な醸し~発酵のプロセスは24~26度の温度帯で進行します。その後8か月間フレンチオーク樽で熟成。(新樽は使用しません)
香り:ブルーベリーやよく熟したプラムなど黒系果実の香りに、甘苦いスパイスのフレーバー、樽香に由来するチョコレートやバニラの風味が続きます。
味わい:果実味に由来する甘味や酸味、ヴェルベットのように滑らかなタンニンが口を覆うようなフルボディ。
熟したプラムや土っぽい香り、とトーストのような樽香がバランスよくマッチします。
飲み頃でリリースしているため、基本的にはすぐ飲むことができますが、熟成ポテンシャルはとても高い造りですので、数年熟成させるのもお勧めです。
シラーの赤
アコンカグア・ヴァレー Aconcagua Valley
サンティアゴから北におよそ65kmのところに位置するアコンカグアはチリの主要ワイン産地の一つです。
アンデス山脈最高峰であるアコンカグア山(6956m)から名づけられた産地で、年間240~300日にも及ぶ晴天日数と日照時間の長さのおかげで、昔から果物と花の産地としてよく知られていました。
近年では高品質なカベルネ・ソーヴィニョンやシラー種の赤ワインが造られ、国際的に高い評価を得ています。
豊富な日照のおかげで、葡萄の成育期間中の最高気温は38℃にも達しますが、西の海岸山脈の渓谷から流れ込む冷たいと海風と、東の山岳部から降りてくる冷気よって夜間の気温は夏でも10℃まで下がります。
この昼夜の寒暖差の大きさによって、香り高く上質な黒ブドウが造られます。
手摘み収穫した果実をさらに選果し、ステンレスタンクで醸造。
伝統的な醸し~発酵のプロセスは24~26度の温度帯で進行します。
その後8か月間フレンチオーク樽で熟成。(新樽は使用しません)
香り:このブドウ特有の、個性的なアロマが楽しめます。スパイスを思わせる刺激的な香りに、プルーンやダークチェリーといった黒系果実のボリュームのある香り、さらに黒コショウやチョコレートの香りも感じます。とても複雑な香です。
味わい:果実味と共にスパイシーなアロマが口に広がります。甘味、酸味、シルキーなタンニンを感じます。最初のスパイシーなアロマに続いて、イチジクやプルーンのボリュームある果実味、ピンクペッパーやブラックペッパーを思わせる風味、樽からくるバニラやチョコレートの風味が続きます。とても典型的な、チリのカルメネールの特徴を表現しています。
シャルドネの白
レイダ・ヴァレー Leyda Valley
レイダ・ヴァレーは非常に小さな地域で、2002年にD.O認定を受けた、まだ新しい産地です。
太平洋からわずか7kmという沿岸部に位置し、南極からの寒流の影響を受ける冷涼な地域です。
また、太平洋からの潮風と霧の影響も受ける為、強い寒暖差の恩恵を受けて、香り高くシャープな酸を持つ高品質ブドウが造られています。
白ワインの銘醸地として世界的に知名度が上がっている注目の産地です。
手摘み収穫した果実をさらに選果し、フレンチオーク樽で醸造、熟成を行います。
伝統的な醸し・発酵のプロセスは12~14度と、とても低い温度帯で進行します。
オーク樽熟成中は澱と接触させ(シュール・リー)最初の2~3か月の間は、定期的にバトナージュを行います。 香り:白桃やネクタリン、マンゴーなどトロピカルフルーツのアロマに、樽熟成に由来するバニラ香が感じ取れます。 味わい:果実味とともに、引き締まった酸味、果実のボリュームある風味と樽香がバランスよくまとまり、エレガントな味わいに。骨格の取れた、余韻の長い味わいは、火を入れた魚介料理、白身の肉料理によく合います。
ぜひ、アナタもワイン界のスーパースターが、生涯をかけて醸造した傑作を試しにいらしてくださいね。
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